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おこぼれ.

安川サイコ《私言》のウェブ版。
by yskw315
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無題

泣かないで
って誰かが言う

泣いてもいい?
って誰かが訊く

本当の悲しみは知らない
本当の優しさもわからない

一人が好き
声がするから

一人が嫌い
声がするから

切り取って名前をつけてくれてかまわない

これは私と私の問題だ
# by yskw315 | 2011-10-25 01:42

246

熱帯雨林のカエルのような色した車が音も無くすり抜ける。
カエルの毒にやられているせいか視界が鈍い。
目の前の大河は絶えず流れているくせにひどく淀んでいる。
岸辺には離別する父と娘。
とうに沈んだ舟の底で丸まって泣くんだ。
予言めいた知らぬ声は無意識に指先まで伝っていて、
誰かをコントロールしているようで、
操られているのは自分だった。
# by yskw315 | 2011-06-01 19:45

無題

動物的な欲求も、
人間的な品位も、
先天性の闘争心も、
後天性の倫理感も、
すべて受け入れた上での
最善と思われる選択を
していきたいものです。
# by yskw315 | 2010-10-30 02:36

喰えなそうで喰われるラー油

涙ぐましい努力と執念で手に入れることのできた少数の家庭のお茶碗から、
大手ファーストフードチェーンのパンの隙間から、
すでに侵攻ははじまっていた。

太陽がまだ高々と昇っているにもかかわらず、
街は夕焼けのようなオレンジ色に染まっている。
おかしいなと思う人もいるが、さして気にもとめていないようだ。
車はなんとなくブレーキが効きづらくなっているようで、
あわや玉突き事故となる事態があちこちで発生している。

街はオレンジ色の液体にすっかりつかってしまった。

そこに一筋のまばゆい銀色の光が差し込んだかと思うと、
車や建物や人をごっそり掬いあげた。
太陽を見ないように慎重に上の様子をうかがうと、
巨大な人影がスプーンを持って覗き込んでいる。
どこかで見たことある面長の輪郭と丸メガネ。

それはたしかにM屋のキャラクターだった。
# by yskw315 | 2010-09-06 12:07

ないしょ

私にとって音楽はすべてではないけど、
とても大切なもので、
やさしいもので、
くるしいもので、
こわいもので、
あたたかいもので、
偉大なもので、
ありふれたもので、
生活の糧で、
信じているけど、
不確かなもので、
どうやら意識のあるうちは、
切り離せないもののようです。

ずっと考えているし、
ずっと考えていてもいい環境にいること自体、
信じられないくらい幸せなことで、
それはそれで苦しいことも多いけれど、
もうそうやってしかいられないのは、
恥ずかしいけどどうしようもないのです。

一喜一憂して、
振り回されて、
それでもあきらめることのできない、
永遠の恋をしているようです。
いつか満たされる日はくるのでしょうか。
いや、私は満たされることを望んでいるのでしょうか。

そんな口に出す必要のない、
我ながら気持ち悪いことを日々考えているのは、
ここだけの秘密です。
# by yskw315 | 2010-09-04 03:22


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